それに佐五郎は答えた。
「はい。あの頃の龍治様は、偶然にも花蔵の近くにいたのです。その後に越前に行ったと聞きました。」
「成程、お礼を言いたいのじゃな。」
「はい。まだ歩けない状態の時に行かれましたから、礼も言えずに今日まで来ました。」
「なら、明後日は一緒に迎えるか。」
「はい!」
「その代わり、食いもんの確保は任せた。」
龍治一人の為に、百人を越えた彼女に従う僧侶の世話もしなければならない。まるでいくさ並の大忙しであった。
「出迎えは嬉しいが、庄左衛門は金沢で今日も得意の金山経営か、羨ましい…。」
佐五郎の苦手な、下働きの分野で食料の調達に不器用に一生懸命に市場を回っていた。
二十九日の龍治・秋津一行は身延の久遠寺に宿泊し、三十日は鰍沢上野城の城下と、付近の寺院に泊まる。
そして十二月一日、山ノ神まで徒歩でやって来て、そこで勘助と合流したのである。
勘助達は、龍治に頭を下げる。
「お初にお目にかかります。某が山本勘助にございます。」
「龍治です。宜しくお願いします。」
その綺麗な声に勘助は驚いた。
「お、おなご…?」
「はい。よく間違われますが。」
やはり最初は躊躇してしまう。そんな女性など考えた事も無いし、龍治という名前からして、誰もが男性の僧侶をイメージしてしまうからである。
「偉そうな名前など、気にしないで下さい。」
龍治はにこやかに返すが、それ以上に気になるのが、二十代前半としか思えない程の肌のつややかさに反した、髪の毛の一面の白さである。まるで老女だ。
勘助は気になって仕方がないから、聞いてみた。
「しかし、その髪はお染めになられたのですか?」
龍治は、それに照れるように返す。
「いえいえ、天然の白ですわ。こう見えても永正末年の生まれですから。」
永正末年とは、十八(一五二〇)年の事である。勘助は佳織姫を一瞬思い出した。
同い年だからである。
その間、佐五郎が命を助けてもらった事で、感謝をした。
「ああ、あの時の。お元気そうで良かったわ!」
龍治は、その偶然出あった事に感謝した。
「誰も知らない土地に来て、覚悟をせねばならないのに、お知り合いに出会えました。ありがとうございます。」
龍治は佐五郎に感謝した。佐五郎は赤くなる。感謝される身ではないのに、なんだか嬉しいと感じた。
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物語を読む上で、結構重要なベースになりますので、是非ご一見ください! |
2008年05月10日
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久良岐 満

