穴山隊と今井隊を放棄したかのような高白斎の言葉は、虎泰にとっては、軍勢が増えるのでむしろ歓迎である。
「ああ、任せろ。じゃがまたボケる気か?腹黒いのう。」
「あの部隊はワシの部隊ではないぞ。その証拠に、松島に来なかったじゃないか。」
高白斎はわざととぼけた。というより、外交手腕の得意な高白斎の戦略でもある。
それに高白斎は本音もつぶやく。
「いくさは疲れた。本当に疲れた…。」
長い付き合いの信方なら、高白斎の今後を理解してくれると、高白斎は身を任せた。
十七日、高白斎の九百人は上原城に向けて出陣した。穴山隊一千人と今井隊百人は、この日から正式に甘利隊に組み込まれる。
だから無論、小笠原の検視は高白斎に馬を走らせて、馬上の高白斎に尋ねた。
「何故穴山隊と今井隊を、連れ戻さないのじゃ?あれもそなたの部隊じゃろう!」
「いいや、あれは甘利殿の部隊じゃよ。」
「違う!ワシは板垣駿河殿から、そんな報告は受けてない!」
「ほほほ…。それは困ったのう。上原に戻り次第、確認を取りましょうぞ。」
「いいや、今から某の部下を林城に送る!」
そう言って、検視は高白斎から離れた。
先陣を任されている勘助の下にも、佐五郎がこの情報を勘助に教えた。
「駒井殿も、引退かのう…。」
なんだか、そんな気がした。この遠征自体がいろんな複雑な事情をはらんでいる。
伊那郡討伐に、小笠原だけでなく、今川も北条も管領も絡んでしまったのだ。
「やはり、捨て石の先発隊という噂は、確かなのかもしれないな…。」
勘助は呟いた。次の伊那遠征までには解決せねば、上伊那支配はない。それでは桜湖姫が願う、諏訪郡の安定はないのだ。
上原城には夕刻に到着したが、高白斎はその場で待ち構えていた長坂虎房と、小笠原の検視に捕まる。
(やはりな…。)
高白斎は、これぞ自分が総大将になった意義と、改めて確認した。
勘助ら五人の諸将も、これに驚いた。五人は縛られないが、共に警戒の中で晴信の下に連れて行かれた。
晴信は高白斎と勘助らに事情を求める。彼等は詳細に戦況を報告したが、小笠原の検視は、高白斎の林城引渡しを要求した。
「一連の軍事活動と、撤退の際の意図的な遅れに対しての和睦条件を破りし罪、駒井高白斎を、我が信濃守護に引き渡して貰う!」
しかし、晴信はそれを断固拒否した。
「この一軒は、諏訪頼継の陰謀が全ての発端じゃ。高遠めを捕まえずして、どうしてワシの大事な家臣を引き渡そうか!」
ここに、一触即発の緊張が出た。
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物語を読む上で、結構重要なベースになりますので、是非ご一見ください! |
2008年05月05日
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久良岐 満

