千曲川支流の湯川を上流に沿って軍勢を進め、それは志賀城からも確認できたが、横根辺りで見失った。
翌閏七月二日未明、八風山から妙な煙が舞い上がった。
志賀城からも確認できた。見張りはホノミのみで山百合はいない。笠原夫人の警護に回されたからだ。
「あれは、敵襲…!」
ホノミは早速下に伝え、その足軽が清繁に報告した。
昨日行方不明になった山本・真田の部隊が八風山山頂にある、管領家の狼煙台を放火したのだ。警護も十人といなかったので、簡単に壊せた。
これが即刻和美峠と愛宕山、入山峠の狼煙台にも伝わり、警護の兵は慌てて逃げ出す。
そして難なく、山本・真田隊は占領と打ち壊しに入ったのである。
「よし、残る狼煙台は二つじゃ。」
勘助は南を向く幸綱も駆け寄る。
「ああ、壊した三つは管領の物、でも残る二つは笠原の狼煙台じゃからな。間近に居城があるだけに、ちと危険だな…。」
「それでも攻めるさ。あと十二日もあるのじゃ。それまでに何とでもなる。」
「おうよ。」
午前中だけで三つもの狼煙台を破棄した勘助と幸綱、次が勝負である。
志賀城からが物見が数人、遠くからこちらを見ている。勘助も気付いている。
物見は早速引いて、清繁に伝えた。
「武田菱と真田の六文戦が見えました!」
という報告で、武田と真田の奇襲と判明した。あの見失った部隊だ。
武田菱は勘助の部隊だ。だから武田の大将までは判明が出来なかった。
清繁たちも、
「おそらく、小畠山城(虎盛)辺りであろう!」
と警戒する。
勘助の武勇は、まだまだ広まっていないのだ。まともな活躍など、松島合戦すらいであるが、噂も伊那代に抜擢された秋山虎繁と大将駒井高白斎の名前ばかりが先行してる。
当時の勘助の武勇など、まだまだなのだ。
勘助と幸綱は、この日は終始八風山に陣していた。
「さてと、敵に身の危険は教えたぞ。」
勘助は腕組みしながら、西南西の奥にかくかに見える志賀城をながめる。
それに、南西麓にある霞ヶ沢には、あの香坂筑前の屋敷も見える。
残る笠原の二つの狼煙台は、放棄するか守備を固めるか、先ずは様子見だ。
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